ご家族が交通事故により亡くなられた方へ
交通事故は、ある日突然、人命までも奪ってしまうことがあります。
ご遺族の方々は、やり場のない怒りに震えるともに突然の喪失感に茫然とされ、深い悲しみにとらわれます。
これまでに多くのご遺族の方々と接してきました。
ご遺族の悲しみ、亡くなられた方の無念さは、いくら賠償金を受け取っても晴れることはありません。どうすればご遺族の気持ちを慰謝できるのか悩むこともよくあります。
先日、示談に至ったご遺族の方々は、相手の方を許したいとおっしゃいました。また、別の事件では、最愛のご子息を失ったお母様が、事故を起した若者に命を奪った重さを忘れずに将来自分の子を育て欲しいともおっしゃっていました。
ご遺族の悲痛な感情に加え、それでも相手の方を思いやる優しさ、命を尊ぶ強さを感じずにはいられませんでした。
当事務所は、ご遺族に寄り添い、ご遺族の皆様が前を向いて歩んでいけるよう日々努めています。
死亡事故の損害賠償
これまでにお子さんを亡くされた方、配偶者を亡くされた方、親を亡くされた方等のサポートをさせて頂いてきました。同じ親・夫・子として、その悲痛な思いは決して解消されるものではないことは明らかですし、もし解消できるとすれば、事故の前に時間を戻すことしかありません。
遺族の思いに少しでも応えるためには、刑事・民事において加害者に償いを求めるしかありません。
また、亡くなられた方の立場でみれば、亡くなられた方の無念な思いの一つに残された家族の生活の心配があります。
事故の相手に賠償を求めても、亡くなられた方が戻ってくるわけではありませんが、少なくとも無念な思いの一つを解消できるのではないかと考えています。
ご遺族の中には、加害者を責めても命が戻ってくるわけではないという感情や相手方を思いやる気持ち(死亡事故を起こした側も精神面だけでなく、生活の基盤を失うなど重大な影響を受けます)から、適正な賠償を求めることに躊躇される方もいらっしゃいます。
しかし、適正な賠償を求めることは、決して後ろめたいことではありませんし、亡くなられた方の無念な思いに応え、残された遺族の今後の生活を支えるために必要なことだと考えます。
死亡事故の場合、比較的早期に相手方保険会社から賠償案が示され、冷静な判断ができないまま、上記の躊躇もあいまって、十分な賠償を受ける機会を逃される方もいます。
そこで、死亡事故において賠償の対象となる主な費目をご紹介します。それぞれの費目毎に賠償額が適正か判断をすることになります。
死亡事故の損害賠償の4分類
分類 | 項目 | |
---|---|---|
A | 死亡するまでの怪我による損害 | 治療関係費、休業損害など |
B | 葬儀費 | 葬儀社への支払いなど |
C | 亡くならなければ得られていたはずの収入 | |
D | 慰謝料 | 被害者および遺族に対する慰謝料 |
葬儀費
葬儀費は葬儀そのものにかかった費用に加えて、49日の法事の費用、仏壇購入費、墓碑建立費が若干認められる場合もあります。
葬儀費には上限があり、自賠責保険では60万円までとされていますが、裁判(弁護士)の基準では130万円~170万円程度が適切とされています。また、香典返しなどの費用は葬儀費には認められていませんので注意が必要です。
慰謝料
被害者が死亡した場合の慰謝料には、大きく分けて2つの慰謝料があります。1つ目は、被害者本人の慰謝料、2つ目は遺族の慰謝料です。
慰謝料の場合も葬儀費同様に自賠責保険の基準、任意保険の基準、裁判(弁護士)の基準によって慰謝料の金額が大きく異なりますので、十分確認しておくことが必要です。
弁護士会の基準の慰謝料
ケース | 慰謝料金額 |
一家の支柱の場合 | 2,700~3,100万円 |
一家の支柱に準ずる場合 | 2,400~2,700万円 |
その他の場合 | 2,000~2,400万円 |
自賠責保険の基準の慰謝料
対象 | ケース | 慰謝料金額 |
被害者本人 | – | 350万円 |
被害者の父母、配偶者、子供 | 遺族が1名の場合 | 550万円 |
被害者の父母、配偶者、子供 | 遺族が2名の場合 | 650万円 |
被害者の父母、配偶者、子供 | 遺族が3名以上の場合 | 750万円 |
※死亡者に被扶養者がいる場合には、200万円が加算されます。
任意保険の基準の慰謝料(現在は廃止されている従来の基準)
ケース | 慰謝料金額 |
一家の支柱であった場合- | 1,450万円 |
高齢者(65歳以上で一家の支柱でない場合) | 1,000万円 |
18歳未満(有職者を除く) | 1,200万円 |
上記以外(妻・独身男女) | 1,300万円 |
※任意保険の統一基準は廃止され、現在各保険会社が独自に支払い基準を作成しています。
従来の基準に準じている保険会社では、自賠責保険の基準よりも少し高い金額が採用されていることもあります。