高次脳機能障害の判断にあたっては、主に下の条件を満たした場合に、外傷性高次脳機能障害の疑いがあるとして、a意識障害の有無とその程度、b画像所見の有無、c因果関係、d障害状況から判断されています。
(1)初診時に頭部外傷の診断があり、経過の診断書において、高次脳機能障害、脳挫傷、びまん性軸索損傷、びまん性脳損傷等の診断があること。
(2)(1)の傷病がXP・CT・MRIの画像で確認できること。
(3)頭部外傷による意識障害が少なくとも6時間以上続くか、健忘症あるいは軽度意識障害が少なくとも1週間以上続いたこと。
頭部外傷があり、意識障害も生じていれば、医療機関において頭部のMRI等の画像検査を行うとは思いますが、仮に何らかの事情で画像検査を行わなかったり解像度の低い検査しか行っていなかった場合、高次脳機能障害の等級認定に深刻な影響を与えてしまいます。
ご家族等が交通事故で頭部に外傷を受けて入院等された場合、早期に下の点を確認・実践されてください。
画像検査を受ける
既に述べてことではありますが、画像検査による外傷所見が極めて重要です。
医療機関から事故に遭われた方の病状等の説明があると思いますが、画像検査の有無・内容の説明も受けてください。もしも十分な検査を受けておられない場合は、速やかに検査をお願いするようにしてください。
専門医のもとで治療・リハビリを行う
高次脳機能障害は、身体的障害を伴わない場合、外見からの判断が難しいことがあります。
そのため、脳神経外科・整形外科だけでなく、神経・心療・リハビリなど広汎に対応できる高次脳機能障害を専門的に扱う病院で、適切な治療を受けつつ、障害に対しても神経心理学検査などの適切な検査・診断を受けることが必要です。
また、リハビリの経過も重要で、事故直後から回復期、リハビリ期間中の症状の改善・経過を記録として残すことも重要です。
後遺障害診断書の作成
リハビリを続けても、限界がきて、回復の可能性が低くなる・見込めなくなる時期が出てきた場合、症状固定の上、後遺障害診断書を医療機関に作成してもらうことになります。
このときに必要な検査や所見を医師に記載してもらうことになりますが、上記で触れました専門医でない場合、必要な記載・検査が抜けていたり、作成に時間を要することにもなりかねません。
医師に作成してもらう前後に後遺障害診断書の記載について意見交換をするなどの準備が求められます。
日常生活状況報告表の作成
後遺障害等級認定の資料の一つに日常生活状況報告表というものがあります。
これは、本人と生活を共にする人が記載することになります。
日常生活状況報告表は、本人の介護・介助の必要性、社会適応能力等を判断する重要な資料となります。
記載される方には、不必要に重く記載したり、あるいは軽く記載するなどせずに、正確に記載することが求められます。
どうしても本人と関係が近ければ近いほど、希望的な観測や家族の自分には分かるなどとの思いから、尋ねられている項目に対してできる方向でチェックをつけがちになります。また、一方で悲観あるあまり重く書いたり、賠償のことを意識して重く書いたりして、医療機関での検査・診断と齟齬する記載となることもあります。
軽く記載すると実際よりも軽い障害と認定されたり、重く記載すると客観的に矛盾した記載等として悪印象から他の正確な記載の信憑性が揺らぐことにもなりかねません。
また、日常生活状況報告表には、補充的に自由記載することもかのうです。
日常生活状況報告表で尋ねられていること以外で(重複していてもかまいません)、交通事故の前後で日常的に接している方が感じた変化や日常生活の変化・工夫・苦労などを詳細・具体的に記載することも重要です(等級認定の審査で、自賠責保険の調査事務所が本人や家族と面談することはありません)。
分かってもらえるはずではなく、分かってもらうために必要な情報を十分に記載することが求められます(文章作成に不安がある方へのサポートももちろん可能です)。
また、「解決事例」も紹介しておりますので、ご参考いただければ幸いです。