死亡事故において、亡くなられた方の損害として、生きていらっしゃったら得ることができたと推定される収入も賠償の対象となり、これを逸失利益といいます。

逸失利益は、就労可能年数(67歳まで)までの収入を推計して算定します。この推計の過程で、存命の場合支払わなければいけなった生活費の割合を控除したり(生活費控除)、将来発生する損害を現時点で受け取るため、将来の利息を控除(中間利息控除)することになります。

なお、事故当時既に67歳を超えていたり、67歳に近い年齢の方は、平均余命を考慮して労働能力喪失期間を考えます。

死亡事故による逸失利益の計算方法は、次の通りです。

逸失利益 = 年収 × (1-生活控除率) × (就労可能年数に対するライプニッツ係数)

①死亡事故の逸失利益の計算における年収は、職業によって異なります。

  1. 給与所得者
    原則として、事故前の現実の税込み収入額となります(本給、諸手当、賞与等)。
    源泉徴収票等で立証していきます。
  2. 事業所得者
    原則として、事故前の収入額、または事業収入中に占める本人の寄与分確定申告書等で立証していきます。
  3. 原則として、賃金センサスの女子労働者の全年齢平均賃金家事に従事していることを同居する家族構成等で立証していきます。
  4. 幼児・学生など
    原則として、男子は男性労働者の全年齢平均賃金で算定し、年少女性は、全労働者の全年齢平均賃金、その他の女子は女性労働者の全年齢平均賃金で算定しますが、現に通っていた学校の学部等の具体的事情に応じて修正もされます
  5. 失業者
    失業中で事故当時に収入がなかった場合でも、労働能力及び労働意欲があり就労の蓋然性があれば、失業前の収入を参考に算定されます。

②生活費の控除

死亡により生活費の支出を免れるため、その割合が生活費控除率として算定に用いられます。
この生活費控除率は、亡くなられた方の生前の家庭内でのポジション・生活状況によって変動します。

  • 一家の支柱:30~40%程度を収入額より控除
  • 女子(主婦・独身・幼児を含む):30~45%程度を収入額より控除
  • 男子(独身・幼児を含む):50%程度を収入額より控除

③中間利息控除

就労可能年数は、原則として、67歳までとなりますが、開業医など業種によっては、70歳までとされる場合もあります。およそ55歳以上の高齢者(主婦を含む)については67歳までの年数と平均余命の2分の1のいずれか長期の方を使用します。
この就労可能年数に対応する中間利息の控除を行うことになりますが、最高裁の判断により、実務上、特段の事情がない限り年5%の割合によるライプニッツ方式を採用するようになっています。超低金利時代に年5%の利息を得られると仮定してその利息分を控除することに違和感は残りますが、実務上ほぼ年5%のライプニッツ方式で確定しています。民法改正により民事法定利率の考え方等に変化があれば、算定方法も変わるかもしれません。