損害賠償金の算定方法(内訳)はご存知でしょうか。

賠償交渉では、単に金額を要求してもその内訳・根拠が合理的でなければ相手方保険会社としても検討のしようがありません。

一方で、相手方の提案に対しても、この算定方法に沿って、提案のどこに問題があるのかを具体的に指摘することが賠償交渉にとって有益です。

当事務所に相談にみえる方の中には、相手方から賠償提案を受けたが、内容が良く分からない、費目が分けて書かれていることから何となくちゃんと計算されていそうと思いながら相談にみえる方がいらっしゃいます。

賠償提案を受けた場合には、賠償金の費目のうち、特に傷害慰謝料・逸失利益・後遺障害慰謝料等に検討を加え、再提案を可否・内容を検討することが求められます。

賠償案の提示を受けた時点で、まだ弁護士に相談されていない方は、一度弁護士に相談されることをお勧めします。

下記には、傷害事案での賠償金の算定方法(主な内訳・費目)をご紹介すると共に、それぞれの費目の注意点を記載しております。

ご参考にしていただければ幸いです。

A 治療関連費

治療費・付添看護費・入院中雑費・通院交通費・装具代・家屋改造費など

B 休業損害

事故で減少した収入の補償

C 入通院慰謝料

受傷(入通院)による精神的苦痛に対する補償

※入通院期間と傷害程度による基準がある。

D 逸失利益

後遺障害がある場合の事故後に予想される収入減少・喪失に対する補償

※事故前年収入や労働能力喪失率を基準に算定

E 後遺障害慰謝料

後遺障害による精神的苦痛に対する補償

※後遺障害の等級による基準がある。

治療関係費について

治療費は、必要かつ相当な実費全額が賠償金として算定されます。

一般に保険対応(保険会社が医療機関に直接支払う)している場合は、治療費の金額を把握されていないこともあります。

保険対応の場合は、医療機関から診断書及び診療報酬明細書が送付されていますので、保険会社から診断書及び診療報酬明細書の写しの交付を受けて、その内容を確認することもできます。

一方で保険対応を打ち切られた場合は、賠償提示額に打ち切り後の治療費は通常計上されません。打ち切り後も治療の必要性・効果が認められる場合は、その治療費も賠償の対象に含まれるとして、窓口で支払われた領収書をもとに計算し、賠償を求めることを検討することになります。

また、交通事故でも健康保険診療を受けることは可能であり、自身にも過失がある場合や相当な治療期間に争いが生じそうな場合等は、健康保険で診療されることをお勧めします。医療機関によっては、交通事故では健康保険を使えないと誤った認識を伝えてくるところもありますのでご注意ください。

休業損害

休業損害は、原則として、現実の収入減少額が賠償の対象となります。

治療のために有給を消化した場合は、その消化分も賠償の対象となりますので、「有給を使ったから休業損害はない」と思わないようにご注意ください。

休業損害の算定方法も、サラリーマン、主婦、パート兼業主婦等、職業の違いによって計算方法は変わりますし、1日の違いはわずかでも休職期間が長ければ大きな差となることもあります。

入通院慰謝料

入通院慰謝料は、入通院日数の基準に算定されます。

この算定には、主に3つの基準(自賠責・任意保険・裁判)があり、入通院期間がある程度長期になると大きな差が出てきます。

逸失利益(後遺障害による逸失利益)

後遺障害の損害賠償は、2つの要素に分けて算定されます。

逸失利益

後遺障害によって労働能力を喪失し、減収が生じるとして算定される逸失利益

後遺障害慰謝料

後遺障害に対する精神的苦痛への慰謝料

自賠責保険の基準では、上記①・②の内訳・配分はあるものの、単に後遺障害に基づく損害に対する補償として一括して支払われることが一般的です。

逸失利益の計算は下記の方法にて計算します。

交通事故前の年収×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数=逸失利益

労働能力喪失率は、一般的には、後遺障害の等級認定で認定された等級ごとに参考とすべき労働能力喪失率が定められています。

このため、後遺障害の等級認定が極めて重要となってきます。

労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数とは、逸失利益が将来の減少分も現時点で受領するため、本来発生する時期までの利息分を控除(中間利息控除といいます)する際の係数を意味します。

労働能力喪失期間が10年の場合、対応するライプニッツ係数は7.7217となり、上記の式でも×10ではなく、×7.7217と計算することになります(民法の改正や社会情勢の変化等で変更もありえますが、平成28年現在では、過去の最高裁判例等で実務上は固まっています)。

逸失利益の計算にあたっては、 事故前の年収の算定方法、労働能力喪失率、労働能力の喪失期間のいずれもが争点となりえ、賠償金額が大きく異なってくることがあります。

後遺障害慰謝料

後遺障害慰謝料は、後遺障害に対する補償ですが、実務上、自賠責保険で認定された後遺障害の等級を基準に慰謝料金額が算定されます。

このため、ここでも後遺障害の等級認定が極めて重要となります。

後遺障害による逸失利益・後遺障害慰謝料は、賠償金の算定にあたって、大きく差が出てくる費目となります。

後遺障害の等級認定を受けた方は適正な賠償金額での賠償、治療中で後遺障害が残る見込みある方(不明の方)は、適正な後遺障害等級の認定へのサポートをさせて頂きますので、お気軽にご相談ください。

後遺障害についてはこちらをご覧ください。