高次脳機能障害は「見えない障害」です。一見回復して学校や職場に復帰できたとしても、事故前と同じ生活ができるとは限りません。保険会社は「復学=介護不要」として、将来の介護費を否定しがちです。本事例は、復学した10代の被害者に対し、将来にわたる見守りの必要性を裁判で立証し、将来介護費を含む総額1億4,000万円の賠償を獲得した、将来の安心を守り抜いた事例です。

交通事故概要

【依頼者】男性(10代)/熊本県在住/学生
【受任時期】賠償額提示後
【傷病名】頭部外傷 高次脳機能障害
【後遺障害等級】3級
【活動のポイント】高次脳機能障害による症状・将来介護の必要性の主張・立証
【サポート結果】6300万円の賠償額の増額

ご相談時の状況:復学後の「介護費」否定

ご依頼者様(10代男性・学生)は、バイク事故で頭部を強打し、高次脳機能障害(後遺障害3級)が残りました。長期入院を経て奇跡的に学校へ復学できましたが、以前のような生活能力は失われていました。しかし、相手方保険会社は「復学できているのだから、将来の介護費用は認められない」と主張。提示された賠償額は約7,700万円でしたが、ご両親は「将来、親亡き後に子供が一人で生きていけるのか」という深い不安を抱え、当事務所にご相談されました。

アリオン法律事務所の戦略:見えない「介助」の立証

この事案の最大の争点は、「将来介護費」でした。私たちは以下の戦略で、裁判所に介護の必要性を認めさせました。

  1. 「見守り・声かけ」も立派な介護であると主張
    身体的な介助は不要でも、高次脳機能障害特有の「記憶障害」「判断力の低下」により、日常生活には家族の「見守り」や「声かけ」が不可欠でした。私たちはご両親から学校生活や家庭内での詳細なエピソードを聴取し、「一見普通に見えても、誰かのサポートなしでは生活が破綻する」という実態を緻密に主張・立証しました。
  2. 判決を見据えた徹底的な訴訟活動
    相手方は最後まで介護費を否定しましたが、私たちは妥協せず判決を求めました。医師の意見書や生活状況報告書を駆使し、「現在は親が支えているが、将来的には職業介護人の手が必要になる」というリスクを裁判官に理解させました。

解決結果:6,300万円の増額と将来の安心

裁判所は私たちの主張を認め、将来介護費を含む高額な賠償を命じました。

  • 将来介護費: 相手方の「否定」を覆し、将来にわたる介護費用を認定。
  • 賠償総額: 当初提示7,700万円 → 判決 約1億4,000万円(6,300万円の増額)。

担当弁護士のコメント

高次脳機能障害の「復学・復職」はゴールではありません。むしろ、そこから始まる「見えない苦労」こそが賠償の対象となるべきです。保険会社は目に見える身体機能だけで判断しようとしますが、私たちは「生活の質」と「将来のリスク」を見ます。お子様の将来を守るために、妥協せず戦いましょう。

よくあるご質問:高次脳機能障害の賠償について

Q1. 身体は動くので「介護」はしていません。それでも介護費は請求できますか?

  • A. 「随時介護」として請求できる可能性があります。 身体介護がなくても、行動の監視や声かけ、スケジュール管理などの「見守り介護」が必要な場合、将来介護費(日額数千円〜)が認められるケースがあります。諦めずにご相談ください。

Q2. 提示額が7,000万円と高額ですが、まだ増える余地はありますか?

  • A. はい、将来介護費や逸失利益の計算次第で、さらに増える可能性があります。 本事例のように、重度後遺障害(1〜3級)の場合、将来介護費が認められるかどうかで、賠償額が数千万円単位で変動します。提示額だけで判断せず、専門家の査定を受けてください。

Q3. 子供が未成年(学生)の場合、逸失利益はどう計算されますか?

  • A. 原則として「全年齢平均賃金(賃金センサス)」を基礎に計算します。 まだ働いていなくても、将来得られたはずの収入として、大卒や高卒の平均賃金を用いて計算します。将来の可能性を最大限に評価させることが重要です。