12級の後遺障害等級の認定を受けた上で、過失割合について、相手保険会社主張の35%を25%への修正を認めさせた上で、訴訟提起と交渉解決を比較しながら、交渉により解決した事例です。

概要

【相談者】 女性(30代) / 熊本市在住 / 職業:パート 
【傷病名】 左肩甲骨骨折、外傷性クモ膜下出血、脳挫傷、頭蓋骨骨折、骨盤骨折・右第5腰椎横突起骨折、左肩鎖関節脱臼等
【受任時期】 治療終了・症状固定後
【後遺障害等級】 12級5号
【活動のポイント】 後遺障害等級の認定・過失割合の検討・解決手段の選択
【サポート結果】 12級認定・過失割合も修正の上での示談解決
主な損害項目サポート前サポート後増加額
休業損害 106万円 
傷害慰謝料 159万円 
後遺障害慰謝料・逸失利益 1073万円 
過失相殺35%25%146万円
合計額 1136万円 

1.相談・依頼のきっかけ

パート兼主婦のAさんは夜間に歩行中に車にはねられ、左肩甲骨骨折、外傷性クモ膜下出血、脳挫傷、頭蓋骨骨折、骨盤骨折・右第5腰椎横突起骨折、左肩鎖関節脱臼等の重傷を負われました。

幸いにも治療が奏功し、体調面も回復途上の時点で、治療後の賠償交渉等を心配されたご相談に見えました。

2.受任後の活動

(1)刑事記録の取り付け

相手方保険会社が35%の過失相殺減額を主張しているとのことで、その過失割合が妥当かを判断するために捜査の終了を待って刑事記録を取り付けました。

刑事記録を前提とすると、35%の過失相殺自体も不合理ではなく、35%前後を基準にぶれが出そうな状況でした。

(2)治療経過の確認

事故状況からすると幸運としかいいようがないほどAさんは回復されており、医師の意見もあり受傷内容からすると早期に症状固定となりました。

ただし、痛み等が残るため、継続的に治療を続けることにしました。

(3)後遺障害の等級認定申請(被害者請求)

医師によれば高次脳機能障害の可能性が残る可能性は低いとのことでした高次脳機能障害の等級認定のための資料もそろえて後遺障害の等級認定の申請をすることにしました。

Aさんには後遺障害等級認定が得られるほどの可動域制限はありませんでしたが、骨折の回復(癒合)や脱臼後の関節の変形傷害がありましたので、その点を明確に後遺障害診断書に記載してもらいました。

その結果、狙っていた左鎖骨の変形障害による後遺障害等級12級の認定を得ることができました。

(4)賠償交渉

相手方保険会社と過失割合についての意見交換を行い、刑事記録から道路状況・道幅・相手方の供述内容を前提として過失割合の修正を求めました。

その結果、示談解決を前提として35%から25%の修正が可能となりました。

損害額については家事従事者・女性平均賃金を前提に裁判所基準での損害を主張し、その主張に沿った金額での調整を行いました。

この間、Aさんには裁判になった場合の予想される過失割合の幅で場合分けした賠償見込み額、その他の争点も含めて説明・打合せを行い、25%過失相殺・示談解決での方針で合意を目指すことにしました。

最終的に25%の過失相殺の上、既払金等を含め1136万円の損害賠償を受けることができました。

3.当事務所が関与した結果

奇跡的な回復もあり、後遺障害の等級認定が認められても14級の可能性があった事案でしたが、骨の変形障害を意識した結果、12級の等級認定を受けることができました。

賠償額も過失割合の修正に成功した上で、裁判基準に沿った解決を図ることができました。

4.(所感)解決のポイント

後遺障害12級認定の可能性をあきらめずに追究した結果、無事に12級を得ることができました。
12級を得たことで損害額が飛躍的に大きくなりましたが、その結果、過失割合次第で最終的な受領額も大きく変化します。

ただ裁判所での過失割合の判断はどうしても不確実で裁判官によっては予期せぬほど不利益な判断もありえます。そこで、想定される過失割合の幅で5~10%ごとに区切って過失相殺後の賠償額を説明し、Aさんにとってベストではありませんがベターな解決として10%の過失割合の有利変更による示談解決となりました。

裁判による損害受領額の最大化(遅延損害金・弁護士費用の加算)を視野に入れながらもリスクを回避して、Aさんも納得できうる賠償を受けることができました。

冷静にリスクを分析・理解いただいたAさんの判断が好結果を生んだと考えております。

解決事例