高齢のご家族が交通事故に遭い、入院生活の末、数ヶ月後に亡くなられてしまう。 遺族にとって、これほど辛いことはありません。

しかし、悲しみに暮れる遺族に対し、保険会社は冷徹にこう告げることがあります。 「事故から時間が経っていますし、死因は肺炎(病死)ですよね? 事故とは無関係です」 「ご高齢でしたから、寿命だったのではないですか?」

冗談ではありません。事故がなければ、元気に散歩をしていたはずの命です。 本事例は、そんな「命の値切り」に対し、弁護士が医学的根拠を持って戦い、「事故と死亡の因果関係」を公的に認めさせた記録です。

交通事故概要

【相談者】 男性(60代) / 熊本県在住 / 職業:会社員
【受任時期】 賠償提案前
【傷病名】 左脛骨・右上腕骨骨折、廃用症候群・誤嚥性肺炎による死亡、死亡事故
【後遺障害等級】 非該当
【活動のポイント】 死亡との因果関係の立証、過失割合の主張
【サポート結果】 死亡との因果関係を認め、過失相殺を否定
主な損害項目相手方主張解決額増加額
賠償額死亡との因果関係否定2,823万円
(治療費等既払金除く)

2,823 万円

ご相談時の状況

「元気に散歩していた母が、寝たきりの末に…」

被害者様(90代女性)は、毎日の散歩とプロ野球観戦を楽しみにされる、とてもお元気な方でした。 しかし、歩行中に車にはねられ、足や腕を骨折。入院生活を余儀なくされました。

「いつか退院できる」というご家族の願いも虚しく、寝たきり状態から「誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)」を併発し、事故から約4ヶ月後に息を引き取られました。 相手方保険会社は、「直接の死因は肺炎であり、事故による怪我ではない」として、死亡に関する賠償を拒否。さらに、目撃者がいないことをいいことに、被害者側の過失も主張してきました。

アリオン法律事務所の「立証」戦略

「高齢だから仕方ない」で終わらせないために、私たちは以下の戦略で戦いました。

  • 戦略①:医学的な「負の連鎖」の証明 「誤嚥性肺炎」は唐突に起きたのではありません。 「事故による骨折」→「長期臥床(寝たきり)」→「廃用症候群(筋力低下)」→「嚥下機能の低下」→「誤嚥性肺炎」 この一連の流れ(因果の鎖)を、膨大な医療記録と主治医の見解を用いて一本の線で繋ぎ、「事故がなければ死亡しなかった」ことを論理的に立証しました。
  • 戦略②:刑事記録による「過失ゼロ」の証明 被害者ご本人は亡くなっており、証言できません。 そのため、私たちは警察の「実況見分調書」等の刑事記録を取り寄せ、詳細に分析。相手方の前方不注意が事故の唯一の原因であることを突き止め、「過失相殺(被害者も悪かったとする減額)」を阻止しました。

解決結果

裁判所は、私たちの主張を全面的に認めました。

  • 因果関係: 事故と死亡の因果関係を肯定(病死ではなく事故死と認定)。
  • 過失割合: 被害者の過失を否定(過失相殺なし)。
  • 最終解決額: 裁判所基準(赤い本)をも上回る慰謝料を含め、約2,823万円(治療費別)で解決。

90歳というご年齢に関わらず、奪われた命の重さは対等であること。 それが法的に証明され、天国のお母様とご遺族の無念を晴らすことができました。

担当弁護士のコメント

高齢者の事故では、「因果関係」と「過失」の2点で、保険会社から厳しい主張をされることが非常に多いです。

しかし、「高齢だから」「時間が経っているから」といって、諦める必要は全くありません。 医療記録の中に、真実は必ず残っています。大切なご家族の最期を「正当な形」で締めくくるために、私たちに力にならせてください。

ご依頼者さまからのアンケート

個人・男性・67才
【事案内容】交通事故

  1. 当事務所の弁護士・スタッフの対応はいかがでしたか。
    大変満足(4.大変満足 3.満足 2.普通 1.不満)
  2. 数ある法律事務所の中から、当事務所を選んでいただいた理由をお聞かせください。
    ○からの紹介
  3. 最後に、当事務所をご利用いただいてのご感想をお聞かせください。
     最初から、そのつどわかりやすく、丁寧に対応していただいて、私達の立場になって進めてもらいました。本当にお世話になり、ありがとうございました。

よくあるご質問:ご家族を亡くされた遺族の方へ

Q1. 事故から半年以上経って亡くなった場合でも、因果関係は認められますか?

A. 認められる可能性は十分にあります。 期間の長さだけで決まるものではありません。「事故による怪我が原因で、身体機能がどう低下し、死に至ったか」というプロセスが医学的に説明できれば、半年や1年経っていても因果関係は認められます。まずは医療記録を拝見させてください。

Q2. 誤嚥性肺炎や持病の悪化が死因でも、事故死になりますか?

A. 事故が「引き金」になっていれば、事故死(関連死)として扱われます。 直接の死因が肺炎や心不全であっても、それが「事故による入院生活やストレス」によって引き起こされたものであれば、賠償の対象となります。保険会社の「病死扱い」を鵜呑みにしないでください。

Q3. 90歳を超えていますが、慰謝料は低くなるのでしょうか?

A. いいえ、命の価値に年齢による割引はありません。 高齢者であっても、死亡慰謝料の基準は変わりません。むしろ、本事例のように、ご本人が楽しみにされていた余生を奪われたことなどを丁寧に主張することで、基準額以上の慰謝料が認められることもあります。