保険会社から「後遺障害は非該当(等級なし)です」という通知が届いたとき、多くの方は「専門家である医師が書いた診断書で審査されたのだから、間違いないのだろう」と諦めてしまいます。

しかし、医師は「治療」のプロですが、「後遺障害認定」のプロではありません。 忙しい診療の中で、診断書の数値に誤記が生じたり、測定方法が不十分だったりすることは、残念ながら珍しくありません。

本事例は、弁護士が診断書に残された「数値の矛盾」を見抜き、異議申立を行うことで判定を覆し、当初提示額の約24倍となる賠償金を獲得した「大逆転」の記録です。

交通事故概要

【相談者】 女性(30代) / 熊本県在住 / 職業:留学生
【傷病名】 右肘骨折後の可動域制限等
【後遺障害等級】 12級6号
【受任時期】 後遺障害等級認定後
【活動のポイント】 後遺障害等級認定への異議申立及び損害額の主張立証
【サポート結果】 後遺障害12級の認定を受けた上で、訴訟提起による解決(受任前の提示額から賠償額約24倍)

主な損害項目訴訟前の提示解決額増加額
賠償額(既払除く)46万円1100万円1054万円

ご相談時の状況:非該当通知と46万円の提示

「右肘が曲がったままなのに、後遺症ではないと言われた」

ご依頼者様(30代女性・留学生)は、原付での事故により右肘を骨折されました。 懸命なリハビリを続けましたが、右肘が完全には伸びない(可動域制限)という重い症状が残ってしまいました。

にもかかわらず、事前認定(保険会社任せの申請)の結果は「非該当」。 保険会社からの賠償金提示は、わずか46万円でした。

「一生この腕と付き合っていくのに、これだけの補償なのか…」 来日して間もないご依頼者様は、日本の制度への不安と不信感を抱え、当事務所へ相談に来られました。

アリオン法律事務所の「分析」と「逆転」戦略

私たちは「これだけの可動域制限があって非該当はおかしい」と直感し、すぐに資料を取り寄せました。そこで決定的なミスを発見しました。

戦略①:診断書の「数値矛盾」を見抜く

取り寄せた後遺障害診断書には、なぜかご本人が知らない間に「加筆」された数値がありました。しかもその数値は、「自動値(自力で動かせる範囲)」と「他動値(医師が手で動かせる範囲)」が全く同じになっていました。

医学的に見て、拘縮(関節が固まること)がある場合、自動値と他動値が完全に一致することは不自然です。 私たちは病院に対して照会を行い、「測定または記載に誤りがあった事実」を認めさせ、診断書の訂正を取り付けました。

戦略②:異議申立と訴訟による徹底抗戦

訂正された診断書を武器に、自賠責保険へ「異議申立」を行いました。 その結果、こちらの主張が認められ、「後遺障害等級 12級6号」(上肢の3大関節中の1関節の機能に障害を残すもの)への変更を勝ち取りました。

その後の賠償交渉でも保険会社とは折り合いがつかず、提訴に踏み切りました。裁判では「労働能力喪失期間」などが争点となりましたが、最終的に私たちの主張に沿った和解案を引き出しました。

解決結果:人生を支える「24倍」の成果

諦めずに「診断書の誤り」を正したことで、結果は劇的に変わりました。

  • 後遺障害等級: 非該当 → 12級6号(逆転認定)
  • 最終解決額: 当初提示 46万円 → 解決額 1,100万円
  • 増額幅: 約24倍(+1,054万円)

もし最初の「非該当」を受け入れていたら、手元には46万円しか残りませんでした。 1,100万円という金額は、これから日本で新しい生活を築いていくご依頼者様とお子様にとって、大きな安心材料となりました。

担当弁護士のコメント

「診断書は絶対ではない」。この事例が教えてくれる最大の教訓です。

どんなに権威ある書類でも、作成するのは人間です。ミスは起こり得ます。 重要なのは、そのミスに気づき、正すための知識と行動力があるかどうかです。

「自分の身体の感覚と、認定結果がズレている」と感じたら、サインをする前に必ず弁護士に見せてください。私たちがその違和感の正体を突き止めます。

ご依頼者さまからのアンケート

個人・女性・30才
【事案内容】交通事故

  1. 当事務所の弁護士・スタッフの対応はいかがでしたか。
    大変満足(4.大変満足 3.満足 2.普通 1.不満)
  2. 数ある法律事務所の中から、当事務所を選んでいただいた理由をお聞かせください。
    何軒か事務所を回った際に、本事務所が一番丁寧にアドバイスをいただき、安心して依頼できると思いました。
  3. 最後に、当事務所をご利用いただいてのご感想をお聞かせください。
    長期にわたる案件でしたが、当初事務所を選んだ際に感じたイメージが変わることなく、都度現状を丁寧に教えていただきました。こちらの希望に沿える形で事件が終了でき、大変感謝しています。

よくあるご質問:診断書の内容に疑問がある方へ

Q1. 医師が書いた診断書に、弁護士が口出しできるのですか?

A. はい、医学的矛盾があれば指摘・訂正を求められます。 弁護士は医療の専門家ではありませんが、「後遺障害認定のルール(自賠責基準)」の専門家です。「この書き方では認定されない」「数値の整合性が取れていない」といった観点から、医師に対して修正や追記をお願いすることは正当な弁護活動です。

Q2. 一度「非該当」になった後でも、間に合いますか?

A. 示談前であれば、十分に間に合います。 本事例のように、非該当通知が来た後でも、その理由を分析し、新たな証拠(訂正された診断書や意見書)を添えて「異議申立」を行うことで、結果を覆せるチャンスは残っています。諦めずにご相談ください。

Q3. 提示額が数十万円ですが、弁護士に頼むメリットはありますか?

A. 等級が変われば、桁が変わる可能性があります。 提示額が低いのは「等級がついていないから」です。等級が(例えば14級や12級に)認定されれば、数百万円〜1,000万円クラスへと賠償額が跳ね上がります。今の金額だけで判断せず、「本来あるべき等級」の可能性を確認しましょう。