当初の認定結果が、高次脳機能障害は5級、左耳の聴力の障害が10級等で、併合4級とされていました。いわゆる寝たきり状態ではなかったものの、Aさんが自宅での独居が困難な状態になっていることを踏まえて、異議申立を行い2級1号が認められました。これをもとに、相手方と交渉を重ねた結果、当初6782万円だった賠償金が1億576万円となりました。

概要

【相談者】 男性(60代) / 福岡県在住 / 職業:会社員
【受任時期】 受傷直後
【傷病名】 外傷性くも膜下出血、左耳重度難聴、右肩拘縮等、高次脳機能障害
【後遺障害等級】 2級
【活動のポイント】 刑事事件の被害者参加・高次脳機能障害につき被害者請求により2級の認定
【サポート結果】 将来介護費・将来治療費を含めて総額1億0576万円(治療費を含む)の賠償金で解決。

主な損害項目当方の請求に対する相手方の当初回答額解決額
賠償総額6782万円1億576万円

1.相談・依頼のきっかけ

Aさんは、高速道路で同乗していた車両が渋滞で停止中(ちょうど熊本地震後の復旧工事等で高速道路が混雑している時期でした)、後方から相手方車両が追突し、外傷性くも膜下血腫、脳挫傷、肋骨多発骨折、肺挫傷等の重篤な傷害を負われました(他の同乗者は1名が亡くなられ、2名が骨折等の怪我を負われました)。

Aさんの勤務先の代表者のご紹介でまずはご家族からご相談をお受けしました。

2.受任後の活動

(1)治療継続

ご依頼をお受けした時点で事故から約7ヶ月を経過していましたが、Aさんは入院中でした。

相手方保険会社にも代理人弁護士がつき、相手方代理人と休業損害の内払い、治療費の保険対応の期間について交渉を重ねながら、事故から約1年8ヶ月間治療費の保険対応が継続された上で症状固定となりました。

なお、治療期間中に当職が助言頂いている脳神経外科医にもご相談しながら治療の見通し等につきご家族とも協議していました。

(2)刑事裁判の被害者参加

この治療期間中に相手方運転手の刑事裁判があり、傍聴していたご家族からは手続から疎外感を感じているとお聞きし、刑事裁判への被害者参加もサポートしました。刑事記録から相手方運転手がタブレット操作中に事故を起こしたこと、そのタブレット操作の時間・走行距離等を割り出し、具体的な危険性を主張しました。

判決では、相手方運転手は実刑となりました。タブレット(スマホ)操作による前方不注視に厳しい判決が下される契機の一つになったと考えています。

(3)後遺障害等級2級の認定 

Aさんには高次脳機能障害による右片麻痺(右半身の麻痺)や認知機能等の障害が残り、自賠責への後遺障害の等級認定を行いました。

認定結果は、高次脳機能障害は5級、左耳の聴力の障害が10級等により、併合4級という認定でした。

Aさんはいわゆる寝たきり状態ではありませんでしたので、4級も決して不合理な認定とまでは言えませんでしたが、Aさんが自宅での独居が困難な状態になっていることを踏まえて、異議申立を行うことにしました。

異議申立にあたって、Aさんの生活状況を再び整理したり、医療記録・資料を検討・提出する等した結果、異議申立が認められ、Aさんには、随時介護を要する障害が残っているとして、後遺障害2級1号の認定を受けることができました。

(4)交渉による解決

後遺障害2級1号の認定を前提に、Aさんには将来介護及び機能維持のための将来治療費が必要であることを前提とした損害賠償金の請求を相手方に行いました。

相手方は、当初、当方の将来介護費の請求に否定的な回答でしたが、交渉を重ねた結果、一定の将来介護費用を受け容れるようになり、和解により解決となりました。

3.当事務所が関与した結果

後遺障害等級2級1号の認定及び将来介護費・将来治療費を前提とした解決に至ることができました。

4.(所感)解決のポイント

受任後症状固定までに1年ほど要し、後遺障害等級認定の自賠責の調査・認定を待つ期間も長期に及び、Aさんやご家族をお待たせすることになりましたが、ご家族が心配されていた将来のAさんの介護費用や治療費を十分に確保することに成功しました。

事件終了時にAさんのご家族が「私たち勝ちましたよね!」とおっしゃられたことが印象的でした。

解決事例